STORY

週に一度、15分から気軽にスタート
子ども主導で遊べる日常をつくりたい

2023.01.18

多摩市にある東寺方児童館は、「ビーボ」(イタリア語で「いきいきと」の意味)の愛称で知られています。公園に隣接した複合施設の1階にあり、2階には図書館、3階には福祉館と地区市民ホールがあり、地域の交流の場としても機能しています。JUMP-JAMは隣の公園で開催。館内にいる子も公園の遊具で遊んでいる子も「JUMP-JAMやるよ!」のかけ声とともに集まってきます。JUMP-JAMを日常化する取り組みについて、馬場﨑さんにお伺いしました。

(プロフィール)
東寺方児童館
馬場﨑 紗摘
もともと子どもが好きで、高校の授業の一環で保育園の実習に行って年中さんクラスで過ごした経験をきっかけに、子どもとかかわる仕事を意識するように。自身の放課後こども教室に遊びに行っていた楽しい思い出もあわさって、2019年より東寺方児童館に勤務。

週イチ、15分間の持続可能なJUMP-JAMスタイル

東寺方児童館がJUMP-JAMを取り入れたのは、3期目となる2019年。東寺方児童館の4人の職員は全員JUMP-JAMのトレーニングを受けており、悪天候の日は開催を別日に延期するなど、柔軟な開催が可能です。学童クラブを併設していないため、日々の来館は子どもたちの気分次第でもあり、一定の人数が集まるとは限りません。職員同士で、この児童館の状況に合うスタイルを話し合って決めたと馬場﨑さんは話します。

「月に一度のイベントとして実施する方法もあると思いますが、子どもたちに定着しづらく、私たちの場合それでは職員のスキルや経験が身につきにくいと考えました。また1回に長時間行うと子どもたちも飽きてしまうし、私たち職員もへとへとになってしまうので、週に一度、15分間行なう形で実施しています。ゲームは月替わりで同じ月の4回は同じゲームを行います。参加人数が少なくて成立しなかったり、低学年には難しくて途中で抜けてしまうといったケースもありますが、同じゲームを4回行うので、1回目にうまくいかなかったとしても毎回職員同士で振り返りをするので、反省点を2回目以降にいかすことができます。今のところこの方法が私たちには合っているようです」

盛り上がったときは15分では終わらず、子どもたちから「もう一回やりたい!」という声が上がることも。そのときは、子どもたちに「どうするかみんなで考えて自分たちで続きをやってね」と任せているそうです。

「それが目的でもあるというか、自分たちで遊びができるようになってほしいので、大人がいなくても子ども同士でJUMP-JAMのような遊びができることを促しています。公園で行なっているので、公園に遊びに来ている子が一緒になってゲームに参加してくれることもあります。

先日は、『JUMP-JAMが気になっていて』と、開催時間を狙って児童館利用の登録に来てくれた親子が参加してくれました。初めての方も15分だと気軽に参加できますし、私たちにはこのスタイルが合っていると思います。これまでもドッジボールなどはやっていましたが、勝負事としてとらえる子も多く体力の差も大きく出ていました。その点JUMP-JAMだと異年齢がみんなで遊べるし、参加者に合わせてルールの変更ができるのがいいですよね」



JUMP-JAMの導入によって、職員も成長

公園が隣接していることから、東寺方児童館の子どもたちはもともと外で体を動かして遊ぶのが大好き。裸足でサッカーをしている子もいます。JUMP-JAMでは「しっぽ取り」など鬼ごっこ系のゲームは人気で、男女や年齢を問わず多くの子が参加しています。屋外での実施であることから、コロナ禍でも接触の少ないゲームを選び、外遊びとして続けることができました。馬場﨑さんはコロナ禍を経て、日常的に屋外でのびのびと遊べる環境や、率先して外で遊ぶ子どもたちの雰囲気をより大事にしていきたいと感じたそうです。さらに、JUMP-JAMを導入して大きな変化があったのは職員のほうだとも語ります。

「JUMP-JAMを導入する前は、子どもとのかかわり方に難しさを感じていました。事務的な仕事ばかりしていてもダメだし、子どもと一緒に遊んでいるだけでもダメなので、どこか受動的になっている自分がいて、子どもから『これ一緒にやろうよ!』などと声をかけられると仕事を中断して遊びに行って、ある程度遊んだら仕事に戻るという形でした。でもJUMP-JAMが始まって『JUMP-JAMやろう!』と自分から子どもたちに声をかけるようになったことで、コミュニケーションの大切さを知りました。もちろん乗り気でない子もいますが、誘い方やタイミング次第でその気になることもあります。一方的に声をかけるだけでなく、コミュニケーションのとり方でその後のアクションが変わってくることがわかって、私自身が“子どものおもちゃ”になったらいけないんだと考えるようになりました。JUMP-JAMの振り返りをする際に、職員同士でもそういった話が多く出るようになりました」


JUMP-JAMを児童館以外にも広めたい

今では、子どもたちのほうから「次はJUMP-JAMいつだっけ?」と声をかけてくれるまでに、東寺方児童館の日常にJUMP-JAMが根付いています。今後は、多摩市内の他の児童館や児童館以外の場でJUMP-JAMの良さを伝えていきたいと馬場﨑さんは話します。

「JUMP-JAMは定期的に研修を行なっているので、他の市の児童館の方と交流ができるのもいいところ。多摩市内の児童館職員が集まることはあっても、JUMP-JAMのことで話を掘り下げる機会はそう多くないので貴重な機会になります。東寺方児童館の職員は皆同じ意識をもってJUMP-JAMに取り組んでいますが、同じ多摩市でもまだJUMP-JAMを実施していない児童館もあります。まずはJUMP-JAMを体験してもらう機会を増やし、さらには市役所の他の課の方にも良さを伝えて、児童館以外のいろいろなところでJUMP-JAMができるようになったらいいなと思います」

馬場﨑さんは実際に市外でのJUMP-JAM実施にも出向き、他の市の児童館職員とともに子ども主体で遊ぶサポートをし、活動の場を広げていました。

(当日のJUMP-JAMの様子)

取材時は、気持ちのいい秋晴れの中「マネマネ大王」を実施。オニとマネマネ大王を1人ずつ決め、マネマネ大王が誰かはオニには内緒に。ゲームが始まったら、マネマネ大王の動きをみんなが真似ることを繰り返し、オニが、マネマネ大王が誰なのかを当てるゲームです。

もう何度もJUMP-JAMに参加しているという3年生のりょうた君は、ラグビーと体操、水泳を習っているスポーツ少年です。マネマネ大王もオニも経験し、どちらも上手に役をこなしていました。

「マネマネ大王になってポーズを取るとみんなが上手に真似してくれて、オニは僕が大王であることをなかなか発見できませんでした。オニ役になると、大王を探すのが難しかったけど、どちらもうまくできました。JUMP-JAMは学年がちがっても、大人もみんなで一緒にできるところが楽しい。また来週も参加したいです」

子どもの成長や運動不足の解消だけでなく、職員と子ども、そして職員同士のコミュニケーションの深化にJUMP-JAMが一役買っているのが印象的でした。


==東寺方児童館で人気のゲーム==
王様しっぽ取り
ひっこし
マネマネ大王
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