STORY

JUMP-JAMなら、初めての遊びにもチャレンジできる
友だちとの運動遊びで、子どもは心も伸びていく

2023.12.05

2019年に開館した「狛江市立北部児童館(通称こまっこ児童館)」では、週1回「こまっこJUMP-JAM」を開催しています。担当職員の大橋さんと、キッズリーダーの子どもたちから、JUMP-JAMの感想と今後の展望などを伺いました。


(プロフィール)
狛江市立北部児童館
大橋らな
幼稚園教諭として働いたのち、もっと遊びを通して子どもたちとの関わりを深めたいと、児童館に転職。子どもの頃から木登りなどの外遊びが好きで、小3から高校までバスケットボール部に所属、児童館でも運動遊びを担当することが多い。

キッズリーダー(※)
そらとさん(小4)、ひなみさん(小4)、そうしさん(小3)
3人ともJUMP-JAMに毎回参加するうちに、自然と審判やルール説明などを担当するキッズリーダーとなる。

せいさん(中1)
児童館がオープンしてすぐの小3から通い始め、JUMP-JAM にも2021年のスタート時の小5から参加している、こまっこJUMP-JAMの初代キッズリーダー。

※JUMP-JAMでは、主体的にJUMP-JAMの企画や運営にかかわる子どもたちを「キッズリーダー」と呼んでいます。


週に1回、30分間の「こまっこJUMP-JAM」

こまっこ児童館の広々と明るい玄関を入ると、1階にはたくさんの本が並ぶ図書室、バスケットボールやダンスなどができる遊戯室などがあります。2階には楽器の演奏ができる防音室や、中高生世代の利用を優先する部屋などを備え、学童クラブも併設しています。
子どもたちが放課後や休日を安心して過ごせる、サードプレイスとして開かれている館内には、元気な足音とにぎやかな笑い声が響きます。

週に1回30分間、曜日は不定期で開催している「こまっこJUMP-JAM」の時間になると、20人くらいの子どもたちが遊戯室に集まってきました。この日の運動遊びは「ふえるふえる 手つなぎおに」です。

「タッチされた人は、オニと手をつないで走ります。オニは4人になったら2人ずつに分かれてください。制限時間は2分です。逃げ切った人は次のオニになれます!」
子どもたちの前に立ってルール説明をしているのは、小学生のキッズリーダーたち。審判とタイムキーパーもつとめます。


繰り返しと振り返りで、遊びを深めていくのが「こまっこ流」

ブザーを合図にゲームがスタートし、子どもたちが遊戯室の中を力いっぱい走り出しました。子どもたちのかけっこは、かなりのスピードです。でも、大きな子が小さな子にぶつからないように、ペースを調整しているのが見てとれます。
2分間があっという間に過ぎると、2回戦目の前にみんなで集まり、振り返りの時間が始まりました。

「気がついたことはありますか?」
「タッチされても逃げ続ける人がいた」
「審判に伝えて、注意してもらうといいね」

「遊戯室のはじっこに追い詰めるのは、あり?なし?」
「はじっこに行かないように、コートの線を引いてみたら?」
「今度やってみようよ」

子どもたちからさまざまな意見が飛び出して、話がまとまらないときは大橋さんが多数決を取って全体の傾向を一旦みんなで把握し、次のゲームをどう遊ぶか考える場面も見られます。短い休憩と振り返りをはさみながら、ゲームは2回戦、3回戦と続きました。新しい遊びに挑戦するときも、その遊びを何度か繰り返すとルールが定着しやすいのだそうです。振り返りは「負けてしまって悔しい」など、子どもたちの胸にあるもやもやした感情を言葉に出して、気持ちを切り替えるためにも大事な時間となっています。


JUMP-JAMは初めて参加する子も、普段は体を動かさない子も楽しめる

キッズリーダーのそらとさんとひなみさんは、双子のきょうだいです。二人は体を動かすのが好きで、JUMP-JAMのない日も中庭でサッカーや、タスケというボール遊びをしているのだとか。
そうしさんは、普段は児童館にある本を読むのが好きで、JUMP-JAMでは「次はもっとこうしてみると良さそう」と作戦を考えたりするのが楽しいと話します。

3人にJUMP-JAMの魅力をたずねると「みんなで一緒に遊べるところ」、「知らない遊びができるところ」。そして「JUMP-JAMは、普段は本を読んだりゲームをしたりして、体を動かさない子でも楽しめる」、「初めて参加する子にも、みんな優しいよ」と教えてくれました。

実はこの日、もう一人のキッズリーダーがゲームに参加していました。オニになって低学年の子と手をつなぎ、引っ張られるようにペースを合わせて走っていた、中学1年生のせいさんです。せいさんは「JUMP-JAMは年齢や性別がちがってもみんなで楽しく遊べるから、いろんな学校・学年の友だちがたくさんできた」と話します。

せいさんが着ているグリーンのポロシャツは、普段こまっこ児童館のスタッフが着ている制服と似ている色を選んだのだそう。大橋さんをはじめとするスタッフを「いつも子どもたちの声に耳を傾けてくれる存在」と話すせいさん。信頼を寄せる大人の背中を見つめながら、優しくて頼りがいのあるキッズリーダーへと成長しました。
小学3~4年生のキッズリーダーの心にも、自分たちがせいさんたち上級生から遊んでもらったように、低学年や初めての参加者をリードしていきたいという気持ちが芽生えています。


コロナ禍で導入したJUMP-JAMが、大きな遊びの引き出しに

こまっこ児童館では2019年の開館以来、遊戯室でのバスケットボールやダンスなど、さまざまな運動遊びを企画してきました。ちょうどそれらがコロナ禍で中止となった2021年に新しく導入したのが、JUMP-JAMです。

大橋さんは「JUMP-JAMは大きな遊びの引き出し」だと感じています。
「遊びのバリエーションがとても豊富で、子どもたちの人数や個性に合わせて運営ができます。子どもたちが飽きにくいように、いろいろとアレンジができるのもうれしい。コロナ禍でも非接触の少人数でも楽しめる遊びを選んで続けることができました」

児童館のイベントとして年齢層を広げるため、「ターゲットボール」をアレンジして幼児も参加できるようにするなど、遊びのアイデアはJUMP-JAM以外でもさまざまに役立っているそうです。

JUMP-JAMの担当に決まった当初は不安もありましたが、児童館職員を対象としたトレーニングでは、すでにJUMP-JAMを実施している児童館の方から具体的な話を聞くことができて、「やってみよう」という自信が持てたと話します。JUMP-JAM導入後は徐々に実践を積み重ね、いまでは他の児童館職員にJUMP-JAMの魅力を伝える立場として実技の講師を務めるほどに。11月に実施したトレーニングの際は、まずは参加者の方に楽しんでもらい、普段子どもたちと実施しているようにみんなで遊びを発展させていくことを意識して取り組んだといいます。



アフターコロナの課題は「ゲーム機」と「失敗したくない気持ち」

コロナ禍を経て子どもたちが自由に遊べるようになった今、大橋さんが課題に感じていることの一つに、ゲーム機との付き合い方があります。小学2~4年生の子どもたちは特に、児童館に遊びに来てもずっとゲーム機で遊んでいる姿が見られるなど、コロナ禍で子どもたち同士の遊びが制限されたときに、ゲーム中心の生活になった影響を感じています。

「ゲーム機で遊ぶことが悪いのではありません。でも、他の遊びにも興味を持つようにアプローチできたらと思います。リアルの世界で実際に自分が主体となって体を動かして、時には勝負を意識して駆け引きをすることや、どんなふうに友だちとコミュニケーションしたらいいかなどを、伝えていきたいと考えています」

もう一つ課題と感じているのは、「新しい遊びに挑戦して、負けるのが嫌だ。失敗したくない」という子どもが多いことです。

「子どもたちを見ていると、体を動かして遊ぶことそのものは、決して嫌いではないと感じます。運動神経の差を感じることも、あまりありません」と大橋さん。しかし、「負けたくない、失敗したくない」という気持ちが先行して、特に勝ち負けのある遊びを遠ざける傾向があると話します。


負けたり失敗したりしながら、また遊ぼうねと言える力をつけていく

大橋さんによると、確かに低学年では鬼ごっこをしていて友達にぶつかったり、風船バレーボールに熱中するあまり、アタックするつもりで前にいる友だちを叩いてしまったりすることもあるのだそう。でも、経験を積むことで段々とボディコントロールは上手になっていきます。

最初から上手くできなくても、「次はどうしたらいいだろう」と考えて挑戦することで、遊びがもっと楽しくなることを知って欲しい、勝っても負けても最後は楽しかったね、また遊ぼうねと終わるようなスポーツマンシップや、気持ちを切り替える力を身につけていって欲しいと、大橋さんは願っています。

JUMP-JAMの遊びは、勝ち負けよりも楽しく体を動かすことを大切にしていますが、それでもスタート当初は「知らない遊びだから、やりたくない」という子どもが多かったそうです。
最初にそのハードルを飛び越えてくれたのは、毎日こまっこ児童館で遊んでいる子どもたちでした。新しいことに挑戦したい気持ちがあったのか、一般利用の子どもたちの意欲も引き出してくれたと振り返ります。


JUMP-JAM を飛び出して、遊びはどんどん広がっていく

こまっこ児童館の子どもたちが好きな遊びのひとつに、走り回って大きなオセロの駒をひっくり返す「リバーシ」があります。
こまっこJUMP-JAMでは、「2色の駒が同じ枚数だと、引き分けになりやすい」という子どもたちの声をもとに、リバーシの駒にランダムに点数をつけるアレンジをしてみました。
参加人数が多いと駒が足りなくなってしまうので、紫×青、青×ピンク、ピンク×紫という3色のリバーシも手作りしているところです。

キッズリーダーのひなみさんは、紙の両面に色を塗ってリバーシの駒を作り、学校の休み時間にクラスメイトを誘って遊んでみたのだそう。
遊びで培われたマインドは、JUMP-JAMの時間を飛び出して、子どもたちの挑戦する力となっているようです。

==「こまっこ児童館」での人気ゲーム==
リバーシ
王様しっぽ取り
キャップオニ
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