STORY

学年をこえた集団遊びで得られる子どもの成長を
JUMP-JAMを通してさらに強く実感

2022.10.31

曳舟駅から徒歩3分ほどの位置にある興望館は、1919年に地域を支援する福祉施設として創立。民設民営の児童館で、学童クラブとこども園を併設しています。館内の広い体育館では、子どもたちが思う存分体を動かす様子が見られ、JUMP-JAMも毎日実施。子どもたちが楽しくJUMP-JAMに取り組むための工夫を、職員の内海さん(写真右)にお伺いしました。

墨田区興望館
内海(うちうみ)健太郎
生後8ヶ月から保育園、学童クラブ、中学生、大学時代のボランティアと長きにわたって興望館を利用。小さい頃から体を動かすことが好きで、自身が楽しく過ごした場所で学齢期の子と関わりたいという思いから、興望館へ就職。


異年齢の集団遊びを大切にしてきた興望館

興望館は、JUMP-JAMがスタートした2017年から参加している10館のうちのひとつ。日々の遊びの中でJUMP-JAMを実施していますが、JUMP-JAMを取り入れる前から異年齢の集団遊びを大切にしていたと、内海さんは言います。

「興望館では、2004年、2005年頃から異年齢交流の大切さを考えていました。異年齢で集団遊びをしていると、上級生が下の子に対してハンデをあげたり特別に配慮をする姿が自然と見られるようになります。上の子が余裕をもって下の子に接してあげるというのは、自分が小さいときにそうされていないと、なかなかできないことなんですよね。小学校では学年を超えた交流が難しいところがありますし、1年生から6年生が一緒に過ごす児童館の中ではとくに異年齢での遊びを大切にしようという気持ちで集団遊びに取り組んでいました。JUMP-JAMを取り入れることで、今までやってきたことが論理的に実証されたように感じ、嬉しかったですね」

これまでの実績もあり、JUMP-JAMへの参加はとてもスムーズだったそう。異年齢での集団遊びでは、年齢や能力による差が大きいため遊びの種類がかぎられますが、JUMP-JAMはゲームの種類が豊富。JUMP-JAMを取り入れるようになってからは、毎日2、3種類のゲームを普段の遊びとして行っているそうです。

「現在、併設の学童クラブには100人以上の子が登録していて、毎日80名くらいの子がいます。来館して宿題を終えるなどしてひと通り落ち着いた4時くらいがJUMP-JAMタイム。30人くらいが自然に集まってきます。時間を決めてイベントとしてやっているわけではないので、JUMP-JAMをやっているという意識がない子もいるかもしれません。今は大学生のボランティアが中心となってJUMP-JAMを実施していますが、どのゲームを行うかをくじ引きで決めたり、ゲームが書かれた紙を壁に貼って、めくったところに書かれているゲームで遊んだりするなど、子どもたちに新しいゲームを知ってもらうための工夫もしています」


大学生スタッフも子どもたちの成長を目の当たりに

内海さんも大学時代に児童館のサポートをしていたそうですが、興望館では古くから大学生のボランティアやアルバイトスタッフを採用しています。現在大学4年生のしおりさんも、ボランティアをきっかけにアルバイトを始めたひとり。JUMP-JAMを繰り返し一緒に行うことで、子どもたちの成長を感じる場面が多々あるのだとか。

「新しいゲームを始めるときに高学年の子に『これをやってみたいんだけど、どうやったらできるかな』という問いかけから始めると、『これなら1年生でもいけるでしょ』とか『みんなを集めてやってみよう』などと言って準備を手伝ってくれます。実際にゲームをやって『どうだった?』と聞くと、『ここができなかった』『1年生にはルールが難しかったかも』などと教えてくれることも。

また、ある高学年の子がJUMP-JAMでルール説明をしてくれているときに、みんなが聞いてくれなくて困ったという経験をしました。その子はその後、私がみんなに話をしているときに騒いでいる子たちに向かって『立っていたら後ろの子が困る』とか『ねぇ、聞こうよ』と周りに声かけをしてくれるようになりました。女の子は負けて悔しくて泣いている子のところに寄り添って『悔しかったね。でも次もあるよ』なんて声をかけてくれる姿も。いつそんな言葉を覚えたのかなと、びっくりすることもあります(笑)」

しおりさんは、自身が子どものときからインドア派で、運動には苦手意識があったそう。児童館に通ったこともなく、児童館での過ごし方を知ったのも興望館でボランティアを初めてから。小さい頃から知っていれば、体を動かして遊ぶことの楽しさを知って運動への苦手意識も持たなかったかもしれないと語ります。


児童館における“遊び”の重要性

取材の日も、夕方4時をすぎた頃から子どもたちが体育館に集まり、JUMP-JAMがスタート。この日のゲームは、子どもたちに大人気の「ひっこし」と「貼りオニ」。「貼りオニ」では、男女対抗で行うことが決まったあと、大学生スタッフが「男の子はどっちの陣地にする?」「作戦会議はどうする?」と声をかけていました。効率を考えると、「男の子はこっちね」「作戦会議するよ」など大人が決めてしまったほうが、ゲームはスムーズに始まります。しかし、あくまで子どもたちが自分で考えてゲームを進められるようコミュニケーションしているのが印象的でした。

この日もゲームは大盛り上がり。JUMP-JAM終了後に3年生の仲良し女の子たちに感想を聞くと、「JUMP-JAMはみんなでできるし、体をいっぱい動かせる」「JUMP-JAMのボールを使うゲームが楽しい」「普段話をしない別の学年の子とも仲良くなれる」「JUMP-JAMで好きな子ができた」と楽しそうに話してくれました。

内海さんは、コロナ禍で子どもの遊びが制限された時期を経て、児童館の役割をますます考えるようになったと語ります。

「最初の緊急事態宣言直後は探り探りで開館していましたが、コロナ禍では産業医の指導のもとマスクと手洗いを徹底し、あまり制限はかけていませんでした。JUMP-JAMも道具を使わない遊びを選んで普段に近い形で実施していたので、子どもたちはコロナ禍でも運動不足を感じることはありませんでした。私たちは、子どもたちから遊びをとったら児童館の意味がなくなってしまうと考えます。子どもたちの能力や体験は遊びの中でこそ身につくもの。今後もそこを大切に、子どもたちと遊びを展開していきたいと思います」

興望館ではこども園を併設しているほか、中高生が立ち寄れる時間を設けているなど幅広い年齢の利用があることから、今後はJUMP-JAMを幼児や中高生の交流のツールにすることも考えているそう。JUMP-JAMが根付いている興望館だからこそできる縦横無尽な展開に、期待がふくらみます。

==興望館での人気ゲーム==
ひっこし
島おに
王様陣取り
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