STORY

子どもたちの力で遊びが自由になっていく、
「できる」「できた」の体験で心身ともに豊かに

2022.05.19

千束児童館はJUMP-JAMのプログラムがスタートした2017年から導入している児童館で、現在は月に一度開催しています。日常遊びの中でも頻繁にJUMP-JAMを取り入れるなど、子どもたちの間でも認知が広がっています。JUMP-JAMを通じた子どもたちの変化について職員の重森さんにお聞きしました。

(プロフィール)
台東区千束児童館
重森 美輝(しげもり みき)
幼少期からダンスや剣道、バスケットボールに取り組むなど体を動かして遊ぶことが大好きで、保育系の学校に通うころから、遊びを通して子どもたちとかかわれる児童館勤務を志望し、2019年より千束児童館に勤務。


◆コロナ禍による子どもたちの変化


東京メトロ日比谷線「入谷」駅から徒歩9分、日当たりの良い公園を目の前にした建物に台東区千束児童館(以下、千束児童館)はあります。1、2階は保育園、3、4階と屋上が児童館の施設で、一帯はいつも子どもたちの元気な笑顔に溢れています。

現在、勤務3年目の重森美輝さんがJUMP-JAMを担当。コロナ禍になる一年前からの勤務ということもあり、コロナ前後の子どもたちの変化は印象的だったと語ります。

「コロナ以前、子どもたちは平気でボール遊びを30分程度続けられていましたが、緊急事態宣言下で体を動かせない期間が続いていたこともあり、その後活動を再開してからしばらくは息切れしてしまう子が多くいました。鬼ごっこでは、後ろ向きに逃げている際に友達同士で衝突するなど、空間認知能力の低下も見られました。また、人と会う機会が減ってスマホをいじる時間が長くなった子が増えて、コミュニケーションがうまく取れなくなってしまっている姿も見受けらたように思います。コロナ禍であらためて運動遊びの大切さを再認識したところです」

人数や距離の取り方などまだまだ制限のある中ですが、気をつけながらJUMP-JAMを続けていく中で、子どもたちは身体的な能力を取り戻してきたといいます。さらに、「JUMP-JAMがあってよかった」と感じる場面も多かったと重森さんは話します。

「児童館は異年齢交流をしやすい場ですが、JUMP-JAMではさらに異年齢の子が一緒に遊ぶことができます。千束児童館では特に、チームに分かれるようなゲームを行う際は作戦会議の時間を多めにとってコミュニケーションにつなげていくことを意識して行っているので、体だけでなく心の面でも大事なツールになっていると思います。子どもも心身ともに豊かになりますし、遊びがもっと自由になっていくのがJUMP-JAMのすごいところだなと思います」


◆子どもたちの『できる』『できた』を大切に


取材に伺った当日は、月に一度のJUMP-JAM開催日。コロナ禍で参加人数が制限されていたこともあり子どもの参加は10名ほどで、さらに職員数名も一緒になって1時間ほど屋上の開放的な空間でゲームを楽しんでいました。この日はスズランテープで作ったしっぽ取りからスタート。途中からしっぽを色分けしてチーム対抗にし、最後は王様しっぽ取りへとアレンジしていました。重森さんがいうように、チーム対抗のゲームでは作戦会議の時間を設け、効率よく相手のしっぽを取るためにどうしたらいいか、子どもたちが活発に意見を出し合っていました。

ゲーム中は、重森さんを始め職員は進行の手助けをするファシリテーターに徹しています。子どもたちのアイデアを否定することなく、子どもが「自分たちで決めた」と納得感がもてるコミュニケーションを促していました。

「千束児童館では、子どもたちの『できる』『できた』を大切にしています。子どもたちが『できる』ところはたくさん褒めて伸ばすというのと、子どもの自信につながる『できた』の経験を増やしたいと思っています。JUMP-JAMでもコミュニケーションの時間となる作戦会議を大切にしていて、子どもたちに意見を出してもらい、その意見が通って『できた』につながるという体験を大切にしたいと思っています」

『できた』という自信や達成感は、また新たな『できる』につながり、いい循環が生まれていきそうです。とはいえ、JUMP-JAMのゲームで負けたときに悔しくて泣いてしまう子や自信をなくしてしまう子もでてきてしまいます。そんなときはどのような声かけをしているのでしょうか?

「まずは子どもに『そうだよね、悔しかったね』と声をかけています。そして次に、もう一度がんばってみようという気持ちの切り替えができるよう、子どもに寄り添っています。悔しい思いをして運動やJUMP-JAMが嫌いになってしまうのはもったいないことなので、そこは大切にしています。また、子ども同士でも声かけができるようになってきて、泣いている子に仲の良い友人が『大丈夫、もう一回やってみよう』と声をかけ、『うん、もう一回やってみる』と涙をぬぐう様子を見ていると、子ども同士の関係性も構築されているのだなと嬉しくなります」


◆キッズリーダーの成長が子どもたちのいい刺激に


千束児童館では現在、子どもたち主導でゲームを運営するキッズリーダーが2人育ち、活躍しています。この日のキッズリーダーは、なんと1年生(2022年3月現在)のきのすけくん。きのすけくんは、キッズリーダーとして活躍するお兄さんたちの姿に「かっこいい!」と憧れ、自らリーダーになることを希望したそう。この日のゲームの進行台本も、きのすけくんが自ら手づくりしていました。ゲーム中、チームで分かれた際の作戦会議では、職員がアドバイスし、キッズリーダーに会議の進行を任せることもあるといいます。

リーダーだけでなく、開催を告知するアナウンスから準備まで、子どもたちが率先して準備をする姿から、JUMP-JAMが千束児童館に根付いていることが見受けられました。さらに、浸透しているだけでなく子どもの成長という点においても、次の段階に進んでいるようです。

「1年生がキッズリーダーとして活躍することで、『自分にもできるのではないか』と他の子のいい刺激にもなっていると思います。今後も、乳幼児や新1年生向けにJUMP-JAMを行って、1年生のときからスムーズに参加できるよう取り組んでいきたいと思っています。いろいろな子どもたちの成長支援をしてキッズリーダーをどんどん育てていくのはもちろん、キッズリーダーが多ければいいというものでもないので、ひとりひとりの役割を増やしてそれぞれに活躍してもらうようになればいいなと思っています」

1年生から長期的にJUMP-JAMに参加し続けることで、子どもたちのどんな成長や変化が見られるのか、千束児童館の今後の活動にも注目です。

キッズリーダー専用のビブスを身につけた、きのすけくん。キッズリーダーになったきっかけも、JUMP-JAMをたくさんの人に知って楽しんでもらいたいという思いから。この日は、「JUMP-JAMをやるから児童館に行こう」と学校のお友だちに初めて声をかけたといいます。緊張しながらもしっかりキッズリーダーを努める姿に、1年生とは思えない頼もしさを感じました。



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