STORY

新規開館の児童館で、JUMP-JAM始動。
子どもたちがアレンジ自由の遊びの楽しさに気づき、主体的に活動をしていく

2019.07.27

2018年に開館した目黒区平町児童館。職員と子どもたちのコミュニケーションも一から始まった新しい児童館で、JUMP-JAMのプログラムを子どもたちに伝えるにはどのような苦労や工夫があったのでしょうか? また、子どもたちや児童館職員にはどんな変化が見られたのでしょうか。館長である志田さんに伺いました。

プロフィール 
志田拓人
小学生から、母親が児童厚生員だったという事もあり、児童館・放課後児童クラブ(学童クラブ)のボランティアに携わる。専門学校、大学卒業後児童館・学童クラブで勤務。その後、民間保育企業に入社し本部側としての運営経験も生かし、2010年より新宿区立高田馬場第一児童館の館長、
2015年より中央区立堀留町児童館の館長。JUMP-JAMプログラムには初期より参加。
現在2018年に開館した目黒区立平町児童館の館長として赴任。

◆徐々に浸透させていったJUMP-JAMプログラム




2018年4月に開館した平町児童館では、開館わずか半年後の11月から、月曜日から金曜日の平日毎日5時半からJUMP-JAMを開催しています。どのようにJUMP-JAMを浸透させていったのでしょうか。そこにはさまざまな仕掛けがあったようです。


「開館してからすぐにTMK(平町キッズスタッフ。以下、TMK)という活動を始めました。TMKは、小学4年生以上の子どもたちが参加でき、児童館のボランティアスタッフとして、イベントの準備や運営に一緒に取り組む活動です。TMKには、開館当時から帰りの館内放送などをやってもらっていたので、JUMP-JAM開始の館内放送などはスムーズにやってくれるようになりました。」


駐輪場や受付スペースにJUMP-JAMのパネルを貼ったり、エレベーター前に資料を掲示して、子どもたちや保護者の目に留まるようにしたり、シンボルカラーの黄色を使ってJUMP-JAMグッズを作ったり、保護者への周知にも努めています。

「JUMP-JAMってなに?」と聞かれれば「運動遊びだよ」と答え、TMKの子どもたちに手伝ってもらいながら、最初は月に一度、11月からは月曜日から金曜日の平日毎日JUMP-JAMプログラムを実施。今では子どもたちが主体的にJUMP-JAMに取り組んでいます。


◆年齢の異なる友達や、非アクティブ層の子の参加で、思いやりの気持ちが育まれる




JUMP-JAM実施により、児童館の中ではどのような効果や変化が現れたのでしょうか。
志田さんは、3点あげられると言います。


「まず、女子や非アクティブ層の子どもたちが運動遊びに積極的に参加するようになりました。JUMP-JAMを始めるまでは、地下のホールで体を動かすのは活発な男子だけでしたが、変化がありましたね。」


まず、女子が参加するようになり、それから非アクティブ層の子どもにもゲームの時はメガホンを持たせて応援するように促すなどして、次第にゲーム自体にも参加するようになったということです。


「二つ目は年齢の異なる友達と遊ぶことで、小さな子どもができないことを見逃してあげるなど気遣いができるようになりました。また三つ目は、ほかの校区の子どもとも、仲良く遊ぶようになりました。」

以前は、違う学校の子どもたちがホールに入って来ると、さっといなくなってしまう様子が見られましたが、JUMP-JAMで一緒に遊ぶようになってからは、そのようなことはなくなったそうです。


◆子どもたちは、アレンジ自由な遊びの楽しさに気がついてきた



なぜ、JUMP-JAMのプログラムを実践することで、そのような変化がみられるようになるのでしょうか。


「勝ち負けにこだわらないので、非アクティブ層や、低学年の子どもたちも参加しやすい点が大きいと思います。『お前のせいで負けた』と言われないですからね。逆にそうやって責める必要もないので、運動が得意な子も、運動が苦手な子や年下の子どもたちに気配りができるようになります。普通の鬼ごっこは、鬼になるのは嫌がりますが、高学年の子が、率先して鬼をやってくれたりするのもJUMP-JAMの面白いところです。」


運動が苦手でも責められず「ここがよかったね、楽しかったね」という気持ちが残るから楽しい。そんなJUMP-JAMはすぐに子どもたちに受け入れられていきました。


「アレンジが自由なところもJUMP-JAMの優れたところです。たとえばルールでは「走る」となっているけれども「歩いてやってみようか」。そんな提案から遊びの範囲がグッと広がり、運動苦手な子も児童館職員もともに楽しめるようになります。


『こうやったほうが面白いよ』『じゃあやってみようか』そんな風にルールを変えていくという面白さに子どもたち自身が気づいてきたのではないでしょうか。」


◆意見が飛び交い、児童館職員とのコミュニケーションも密に




新規開館の児童館ということで、児童館職員と子どもたちの関係は一から始まりました。しかしJUMP-JAMがあることで、コミュニケーションが増えたと志田さんは感じています。


「『今日何やろうか』『昨日やったあのゲーム、またやりたいな』そんな子どもの意見が活発に出てくるようになり、子どもたちと職員の間の距離感が縮まったと思います。」


平町児童館では、月に一度職員が遊びの研究の日を設け、JUMP-JAMのプログラムをさらにアレンジをしたり、今まで遊んでいないプログラムを試してみたりしながら、よりよくJUMP-JAMを楽しむにはどうしたらよいか、職員が一丸となって考え、実践しています。


◆地域に広がるJUMP-JAM


現在、毎週水曜日の2時から、幼児向けの「ぷちJUMP-JAM」を実施。未就学児と保護者が一緒にJUMP-JAMで遊んでいます。


「子ども対親でリバーシをやったりして、盛り上がりますよ。結構親のほうがムキになったりして。(笑)」。


未就学児のときから遊んでいることで、小学校に入ってから、スムーズにJUMP-JAMで遊べるというメリットもありそうです。さらに、「ぷちJUMP-JAM」で遊んだ子どもたちが、保育園や幼稚園で話をし、保育園や幼稚園から遊び方についての問い合わせや、道具を貸してほしいという依頼があることも。


「そんなときにはJUMP-JAMが広がっていることを実感します。」

2018年度の第2期までに、目黒区でJUMP-JAMを取り入れている児童館は、平町児童館のみでしたが、今期より2館増えて、3館となりました。


「JUMP-JAMを取り入れている児童館同士では、こうやったら面白かったといった情報交換や、単独では気づけない発見も増えてくるのではという楽しみはあります。まだ取り入れていない近隣の児童館には、機会をみて言葉掛けをしています。」と志田さん。


保育園、幼稚園、他の児童館などと交流を深めながら、JUMP-JAMの取り組みは少しずつ、確実に地域に広がりを見せています。



(取材・文 宗像陽子 写真 平林直己)
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