STORY

子どもたちが「楽しい気持ちで終われる体験」をつくる、
力を引き出すファシリテーターに

2022.01.20

国立市にある中央児童館では、近所の小学校や公園を利用して移動児童館を実施しており、その中で月に1度程度JUMP-JAMの時間を設けています。職員の酒森さんに、JUMP-JAMでの子どもたちの様子を伺いました。

(プロフィール)
酒森未来さん
中学校・高校の教諭免許をもつ。児童館でアルバイトとして勤務していた友人からの誘いをきっかけに、2015年より国立市で児童館職員となり、2020年より国立市中央児童館に勤務。


◆教員志望から児童館職員へ


国立市内に3カ所設置された児童館の1つ、国立市中央児童館(以下、中央児童館)。福祉会館内に設置された児童館です。2020年よりこちらに勤務するのが、職員の酒森未来さん。小さい頃から体を動かすことが大好きで、両親の影響もあって小学校入学前から大学までソフトテニスを続け、大学は体育大学に通い、中学校・高校の教員免許を取得しました。また、水泳の習い事も行うなど根っからの「アクティブ人間」だと語ります。

「児童館でアルバイトとして勤務していた友人からの誘いをきっかけに、児童館職員として働き始めました。小学生と接するのはそのときが初めてだったのですが、子どもたちは想像以上にいろいろなことを考えていることがわかり、面白さを感じました。当初は、部活動顧問の先生に憧れ教員を志望していましたが、児童館の職員はより幅広い年代の子どもたちに寄り添うことができるので、教員とはまたちがった魅力があることに気付きました」


◆スポーツと運動遊びのちがい


中央児童館では、2019年からJUMP-JAMの取り組みをスタート。体を動かすことが大好きな酒森さんは、率先してトレーニングを受け、活動の中心となってプログラムを実施しています。

「私自身、ずっとスポーツをしていたのでわかるのですが、スポーツは勝敗が厳しく、続けているとどうしても嫌になることがあります。でもJUMP-JAMはずっと『楽しい』ままいられるのがメリットだと思います。途中で抜けてもいいし自由度が高い。一方、自分ひとりでできるものではないので子どもたち同士で作戦を練ったり、意見を聞き合ったりと、コミュニケーション能力が必要とされます。例えば『ここをどうやって移動する?移動方法を考えない?』と聞くと、子どもたちから意見がたくさん出てきます。JUMP-JAMを始めてから、子どもたちのそういった自ら表現する力が育まれているように感じます」

また、このような状況では、職員側の上手な采配も求められます。自分の意見が通らずふてくされる子、低学年ができないような難しい案を出してくる子……。酒森さんは、「みんなが笑顔で終われる方法を探る」ことを意識していると言います。

「みんなから出たアイディアをできるだけ多く採用できるよう『順番にやっていこう』と伝え、まずは小刻みに意見をとりいれてやってみる。最初はしぶっていた子もやっていくうちに楽しくなって別の子の案で遊び続けるというケースも多くあります。子どもたちは、自分の意見が否定されないことがわかると、採用されるかはわからなくても意見を言ってくれるようになります」


◆自分で考える力を育み、みんなで話し合う大切さを学ぶ


話し合いの中でゲームのルールを決めていけるのも、JUMP-JAMの醍醐味。酒森さんはもともと教員志望ということもあり、職員になった当初は『ダメなことはダメ』という線引きが厳しかったといいますが、JUMP-JAMの取り組みを通して自分自身の考え方も少しずつ変わってきたと話します。

「例えばドッチボールなら、ボールに当たったら外に出るという明確なルールがあります。『当たったら外だよね』と大人に確認しにくる子もいるので、昔だったら『そうだよね、ドッチボールはそういうルールだね』と答えていたと思いますが、JUMP-JAMで遊びは形がないもの、子どもの意見を聞きましょうと学んでからは、『それなら最初からみんなで新しいルールを作っちゃえば』など、話し合いを促す声かけができるようになりました」

こういった遊びの経験は、コロナ禍で変更を余儀なくされた児童館のルールづくりにも活きたそうです。飲食など禁止事項が増えた際に、子どもに「ダメ」と伝えるのではなく、その状況の中で何ができるのか、どうしたら子どもが安心して過ごせる環境をつくれるのか、子どもと一緒に考えられるようになったと言います。


◆キッズリーダーの育成を目指して


現在、JUMP-JAMの活動は移動児童館がメインとなっていますが、今後は中央児童館内でも実施を増やし、参加人数を増やしていきたいと語る酒森さん。

「私たちの児童館では、小学校や公園でイベント的にJUMP-JAMを開催しいていることや、低学年の利用が多いこともあり、キッズリーダーの育成については今後本格的に取り組みたいと思っています。よく来てくれる子が準備を手伝ってくれることはあるのですが、開催前に打ち合わせをするなどリーダーとしての役割を与えきれていない現状があります。今後は、ルール説明や呼び込みなど少しずつ子ども自身が主体的になるように、キッズリーダーを育てていけたらいいなと思っています」

大人も子どもも、楽しく異年齢交流できるJUMP-JAMだからこそ、決められたルールを守るだけでなく、自分たちでルールを考え、そのために意見を出し合うことの大切さを学べます。「子どもに教える」指導者から「子どもの力を引き出す」ファシリテーターへ。酒森さんはじめ職員が成長していく様子も、垣間見られました。

小学2年生のなかむらたけるくんは、サッカーや外遊びが大好きな中央児童館の常連さん。高学年と一緒にサッカーをしていた際、ほとんどボールに触れずつまらなくなってしまったことから、同日に開催していたJUMP-JAMの「ひっこし」に参加してみたといいます。サッカーとはまたちがう楽しさを知り、リピーターに。たくさんのゲーム内容が記載されたJUMP-JAMのゲームブックを目にし、「次はこれをやってみたい!」と目を輝かせています。



==国立市中央児童館での人気ゲーム==
・しっぽとり
・ダッシュダッシュ
・コーディネーションジャンケン
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