STORY

その場に合わせてルールを工夫することで、子どもも職員も一緒に成長できる

2021.11.26

荒川区熊野前ひろば館
若山 千穂

(プロフィール)
大学卒業後、保育士の資格を持ち2018年から荒川区熊野前ひろば館に勤務。大学時代に児童館で実習し、小学生と関わって遊ぶ楽しさを知る。自身が小学生の頃に児童館に通い、異年齢の友人と楽しく遊んだ経験も仕事にいきているという。


◆子どもの遊びの選択肢を増やすために


日暮里・舎人ライナー「熊野前駅」からすぐのところにある、荒川区熊野前ひろば館(以下、熊野前ひろば館)。学童保育クラブを併設している児童館で、子どもの運動遊びの選択肢を増やしたいと、3年前にJUMP-JAMを導入したといいます。現在、熊野前ひろば館でJUMP-JAMのトレーニングを受けた職員は3名。3年前に入職した若山さんは、そのうちのひとりです。

「入職当時は学童保育クラブの配属だったので、学童の子を連れてJUMP-JAMに参加していました。初めて参加したときは、『こんな遊び方もあるんだ』と勉強になったし、私自身も楽しんでいました。大人だから勝てるという内容ではないので、『負けないぞ!』と本気になって走り回っていたことを覚えています」

現在は児童館の担当になり、週に1回、時間を決めてJUMP-JAMを開催。コロナ禍ではボールや道具を使った遊び、息切れしてマスクを外してしまうような激しい運動などを制限していたそうですが、JUMP-JAMは道具を使わないゲームも豊富で、運動量も調整しやすく子どもが飽きずに取り組めているそうです。ゲームの自由度も高いため、子どもたちがルールに関して発言したり、リーダーシップを発揮したりする機会も増えているのだとか。

「うちの館では低学年の参加者が多いため、最初は職員主導で運営していましたが、回数を重ねるにつれて子どもたちから『今日はこれをやろうよ』など意見を出し合ったり、ルールを工夫して楽しんだりする機会が増えてきました。高学年の子が入るときは、こちらが頼まなくてもチーム分けやルール説明を買って出てくれることもあります。やっていくうちに不都合が出てきたら『次はオニを増やそうか?』といったアイディアを出してくれたり。そういった姿を見ていると成長を実感でき、JUMP-JAMが運動不足の解消だけでなく、子どものさまざまな力を育むのに役立っているなと感じます」


◆異年齢交流、新しい友人関係の形成の場として機能


異年齢交流、特定の友人以外との交流ができるのもJUMP-JAMの醍醐味。日常遊びの中では、例えば学童の子は学童の子と、自由来館の子は一緒に遊びにくる友人とのみ遊ぶのが一般的で、知らない子に声をかける姿はほとんど見られませんが、JUMP-JAMの中では自然に交流が生まれます。

「JUMP-JAMを始めるときは、その時間に来館している全員に声をかけてまわります。ゲームのチーム分けはランダムに行うため、学年や男女がバラけるよう配慮はしますが必然的に知らない子とも一緒のチームになります。そこで自己紹介まではしませんが、『見たことがあるな』くらいの仲の子同士なら自然に会話が生まれて友人関係も生まれます。

以前、5年生の子がチーム分けをしてくれたときは、1年生の子がお兄さんに話しかけてもらえるのが嬉しかったようで、ゲームが終わったあとに『一緒に遊んでくれない?』と話しかけている姿も見られました。中にはゲームには入りたくないけど、お手伝いはできる、応援係はできるというタイプの子もいて、そういった子も自分らしく関わる余地があるのもいいところです。今、子どもたちが異学年で関わりあう場所が本当に少なくなっているので、その点も意識してJUMP-JAMをやっていきたいと思います」


◆子どもだけでなく職員を成長させるJUMP-JAM


低学年から大人まで一緒に楽しめるJUMP-JAMのゲームは、簡単な内容とはいえ勝ち負けのあるものです。子どもたちの年齢や個人の体力には差があるため、負けが続くとやる気を無くしてしまうケースもあります。

大きく差がついてしまうときには、「次はこういうルールでやっていこうか」など職員が参加者を見極めて、ルールを工夫したり配慮をすることも必要です。ときには四方八方から出てくる意見をうまくファシリテートする力も要求されます。若山さんは、JUMP-JAMによって、「こうしなさい」と教えるだけでなく、どうやったらみんなが楽しく参加できるかを子どもと一緒に考える視点を得られるようになったと話します。熊野前ひろばにおけるJUMP-JAMのプログラムは、子どもの成長だけでなく職員同士の切磋琢磨にもつながっているようです。

「最初の頃は、JUMP-JAMの内容が書かれたゲームブックから実施するゲームを選ぶときに、『このゲームのルールはこういうことでいいのかな?』などマニュアル通りに実施しようという考えでいました。でも一緒に考えていた別の職員が『工夫していいんだから、思うようにやったらいいのでは?』と言ってくれてファイルを見る視点が変わりました。それからは『熊野前ルール』でいきましょう! とみんなで想像力をフルに発揮して、新しいルールを考えられるようになりました」

◆子ども主体でのプログラム実施を目指して


以前は、熊野前ひろば館の独自の取り組みとして、「ガールズタイム」「ボーイズタイム」を設けていたこともありました。これは「男子と一緒は苦手」「女子がいないならやる」という子が参加しやすくするための配慮で、この時間にJUMP-JAMデビューを果たした子も多かったといいます。

熊野前ひろば館のJUMP-JAMのゲームブックには、たくさんの付箋が貼ってあります。この付箋は実施したことのあるゲームに貼られる目印で、実施するゲームが偏らないようにする工夫なのだとか。

「今年度は、子どもたちにたくさんの遊びを知ってほしくて、いろいろなゲームを取り入れられたらいいなと思っています。JUMP-JAMの時間だけでなく普段の遊びに移行できるものは移行し、普段の遊びも広げていきたいので、『今日は何をやるか?』という段階から子供と話し合い、新しいゲームをつくることができたらいいですね。私がいなくても子どもたちが率先して遊べるのが本来のベストだと考えているので、それができるよう、今はいろいろな遊びに挑戦していきたいですね」


==熊野前ひろば館での人気ゲーム==
・ひっこし
・民族大移動
・キャップオニ
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