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子どもの運動の課題に関するオンラインセミナーで、JUMP-JAMを紹介しました!(詳細版)

2022.03.03



1月27日(木)、ナイキ主催の「コロナ禍における子どもを取り巻く運動環境の課題と解決策」に関するオンラインセミナーが開催され、その解決策の一つとしてJUMP-JAMを紹介しました。

セミナー前半には、JUMP-JAMプログラムの監修者である千葉工業大学創造工学部体育教室の引原有輝教授から子どもの身体活動における課題と解決策について最新データとともに共有いただきました。

(以下、引原先生のお話より抜粋)
近年子どもたちの運動不足が問題になっていますが、スポーツ庁による調査でここ10年間の体力・運動能力の変化を見ると、実は男女ともに徐々に改善傾向にあります。これは、国や教育現場の体力向上の取り組みの成果だといえます。ただし、2020年からはコロナの影響で子どもたちの体力はぐっと低下してしまっています。


一方、子どもたちの身体活動状況では、ここ5年間でスマホやテレビを使用する時間(スクリーンタイム)は男女ともに増加傾向にあります。また、ここ14年間の運動・スポーツの実施時間を見ると、男子は減少傾向にあり女子はほぼ変化がありません。以上のことから、体力が向上しても運動時間は必ずしも増加するわけではないことがわかります。そのため、子どもたちがアクティブに動けるような働きかけを継続して実施する必要があります。

習い事について見てみると、ここ数年子どもたちの運動やスポーツに関する習い事への加入率は増えています。また、スポーツクラブなどに加入している子、していない子で運動する頻度の差が年々大きくなっています。なお、家庭の経済状況が豊かであるほど運動・スポーツの機会も増える傾向にありますが、運動遊びについては差がほぼないことがわかりました。

そのほか、両親の学歴やスポーツへの興味関心、周辺地域の環境、子どもの心理状態によっても運動実施状況は変化すると考えられます。子どもたちの運動実施状況を良い方向に変えていくには、子どもたちをとりまく環境にも目を向けることが必要です。



そもそも、子どもにとって運動やスポーツによる恩恵とは何でしょうか。それには2つの側面があります。1つは運動そのものの効果であり、ボールを使う、走るなど身体への刺激が心にも良い影響を与えるということです。もう1つは、スポーツは集団で行うため、コミュニティに属していることで問題解決やコミュニケーション能力を高め、精神的な成長をもたらすことが考えられます。しかし、競技性が高すぎると「選手に選ばれない」「コーチと良い関係を築けない」などから心の不調をきたす場合があります。

ここで、遊びの価値に着目してみます。遊びの要素としては、とにかく楽しく面白く、自分で意思決定できること、見返りや成果を求めないこと、スポーツのように関係性の序列がないこと、自由で新しい発見があること、仲間との約束事があることなどが挙げられます。遊びは、子どもたちの対人関係能力、自身の感情コントロール、“自分ならできる”という自己効力感などに関してプラスの効果をもたらします。



最近では、「非認知能力」という言葉が注目されていますが、ベネッセ教育総合研究所によると「学びに向かう力」と定義され、これは遊びを通じて獲得できると考えています。この「学びに向かう力」は、学力・健康・体力を向上するアクティブなライフスタイルにつながっていきます。この効果は、大人になっても継続するといわれています。

子どものアクティブ化に向けた継続的な対策のためには、遊びと運動を掛け合わせた「運動遊び」が重要だと考えています。それを保護者・教育関係者・行政関係者を含めたステークホルダーで、支援していくことが重要です。


セミナー後半には、子どもの遊びや運動を支援している一般社団法人ルーデンスジャパン代表理事の山田恭平さんをモデレーターに、JUMP-JAMを実施している調布市立染地児童館職員の塚越利香さんと引原教授とともに、子どもの運動遊びを支援されている現場での課題と事例について対話しました。

(以下、塚越さんのお話より抜粋)
染地児童館では、運動する子は館内の運動スペースで遊んでいることが多いです。そこまで運動しない子は、本を読んだりお絵かきをしたり、静かに過ごしています。コロナになってからは、走る遊びをすると運動スペース内にある柱に気付かずぶつかってしまう子も出てきています。


現在毎週木曜にJUMP-JAMを実施していますが、JUMP-JAMをやり始めてからは、普段は一緒に遊んだりはしないような、ちがう学年の子ども同士で作戦会議やゲームの中で協力をする姿が見られました。また、何事にも消極的だった子が運動遊びという敷居の低さを感じてくれたのか、見学しに来てくれたりもしました。

ゲームも、子どもたち自らルールを決めて主体性を持って遊ぶことができています。基本的には職員がゲームを運営しますが、子どもたちが運営のお手伝いをしてくれるときもあります。時にはルールを守らない子もいますが、遊ぶための準備をお願いしてみると自らやってくれるなど、良い変化が生まれています。

今後は運動遊びを拡げるために、近隣の小学校などでもJUMP-JAMを実施していきたいと思っています。中には運動したくない子もいるかもしれませんが、最初は見学だけでも良いので、運動遊びの楽しさが多くの子どもたちに伝わると良いなと考えています。

最後に引原先生から、「大人が用意した既定のプログラムをただ提供するのではなく、そこから拡がりをつくることが遊びの価値。子どもたちだけの世界の遊びも重要だが、子どもたちの想像力だけではなかなか次の遊びに展開していかない場合もある。大人も教えたり指導したりするのではなく、子どもたちと同じ目線で一緒に遊びの可能性を拡げることが重要」と締めくくられました。

セミナーを通じ、運動遊びの価値について理解を深めるとともに、これから運動遊びを拡げていくにあたり貴重なヒントを得られる機会となりました。

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